mokzoさんの写真がすばらしい
この連載の第19回「mokzoさんの写真をみて見てぼーっとする」で、Tumblrで出会った「mokzo」さんという、味のある風景を写真に撮る方を紹介させていただいた。
mokzoさんとのメールのやり取りの中で、「ぜひ今度、撮影に同行させてください」と図々しく頼み込んでみたのだが、ありがたいことにそれが実現した。なんとなく気になる場所を選んではとりあえず歩いてみる、というmokzoさん、相当色々な町を歩いているそうなのだが、今回は「亀戸辺りでどうでしょうか」とのこと。自分としてもあまりこれまで行ったことのないエリアなので楽しみである。
土曜の昼すぎ、約束の時間にJR亀戸駅で待ち合わせる。当日はもちろん、mokzoさんの写真から起こしたこのTシャツを着ていった。

笑ってもらえた
mokzoさんとお会いしたのはこの日が2回目で、前回は軽く挨拶させていただいただけだったので、会う前は少し緊張したが、いざ顔を合わせてみると、何度も一緒に散歩をしてきたかのようにスムーズな流れで散歩が始まった。いい景色やいい建物を見つけるとピタっと足を止め、サッと撮影してまた歩き始めるmokzoさん。あの写真はこんな風に撮影されているのか、と感動する。とにかくスピードが速い。一箇所に留まることなく歩き続けながら写真を撮っていく。

撮影中のmokzoさんをパチリ
散歩がはじまる
ここからは、mokzoさんが実際この日に撮影した写真を間に挟みながらその模様をレポートしていきたいと思う。途中、比較対象として私が撮影した写真も入れてみます。その違いが歴然とするであろう。

撮影・mokzo
まずは駅北口方面から、線路沿いのあたりを適当に折れ曲がりながら歩いていく。駅前の喧騒がいきなり消え、路地と住宅街と、小さな商店街の風景。何もない片隅で、老人たちが集まって立ち話をしていたり、とりあえず自転車で走り回るだけで楽しそうな子供とか、庭いじりをしてるおじさんとか、みんなそれぞれ忙しいんだか暇なんだか分からない。

撮影・mokzo
「うーん。こっちは何もなさそうですね。あっち行ってみましょう」と、mokzoさんの勘を頼りに歩いていくと、そもそも方向感覚に乏しい自分は完全に迷子になったような状況で、ここがどの辺りなのかもわからずとにかく進む。

撮影・mokzo
この撮影散歩の後、帰宅後にmokzoさんからこの日撮った写真のデータを送っていただいたのだが、それを見ていて、こんなのあったっけ?と思うものがたくさんあった。さすがの嗅覚。

撮影・mokzo
ちなみにこちらは、

撮影・鈴木
mokzoさんの感覚をなんとなく真似ている感じがお恥ずかしい限りです。

撮影・鈴木

踏み切りの向こうへ向かうmokzoさん。撮影・鈴木
mokzoさんは、つい先日まで、「青春18きっぷ」を使って大阪から九州まで旅をしていたという。目的は今日と同じで、とにかく歩き回って、何か面白いものがあれば写真を撮るということだけ。

撮影・mokzo
「それが帰りに滋賀のあたりで見つけちゃったんですよ。いい建物を。電車の窓から」と、車窓から外を眺めているのが楽しくて仕方ないというmokzoさんは言う。「だから、また今週末に滋賀まで行ってこようと思ってますよ」っていう、その情熱と、その目的のなんというか、生産性のないところが素晴らしい。

撮影・mokzo
駄菓子屋の前で休憩
「こっちに亀戸水神駅っていうのがあるそうです。東武亀戸線…の」、亀戸線…聞いたことがない。少し迷って行きつ戻りつしながら、駅に向かう。

撮影・mokzo
案内板をみると亀戸駅−曳船駅間を往復する5駅だけの路線のようだ。電車は2両編成。この路線に沿って散歩するのも楽しそう。
駅近くの駄菓子屋

撮影・mokzo
で各自おやつを買って公園で食べる。そしてまた歩き出す。この日、どこかに立ち止まった記憶といえば、この公園での駄菓子の立ち食いと、撮影終了後の飲み屋だけ。これほどストイックかつ純粋な散歩はないんじゃないでしょうか。

撮影・mokzo
今度は江東新橋を渡って、「平井駅」方面を目指す。橋を渡ってしばらくは「蔵前橋通り」という大通り沿いの、あまり見どころのない風景が続くが、平井駅近くの小道を入っていくと、住宅が立ち並ぶ入り組んだ路地の景色になる。mokzoさんは、細い路地や線路沿いの寂れた道が好きなようである。あと小さな商店街も。

撮影・mokzo

撮影・mokzo

撮影・mokzo

撮影・mokzo
普段、町を歩きながら色々な方向に目をやっているつもりだったが、mokzoさんと歩いていると、自分が見落としている場所にこそ面白いものがあることがわかる。
この「いちごや」も、入り口に書かれた店名をみて変な名前の店だなーと思ったぐらいで通り過ぎた私だったが、mokzoさんはその頭上の看板のいい具合のいちごのイラストを写真に収めているのだった。

撮影・mokzo
この建物と建物の隙間のビニ傘なんかもまったく気づかなかったな…

撮影・mokzo
それにしても、誰かと一緒に歩いて、その人が何を見ていたかをあとで知ることができるなんて、相当楽しいことじゃないだろうか。

撮影・mokzo
希望は散歩にしかない
キョロキョロしながら歩き続けるうちに、軒先の植木とか、停めてある自転車とか、とりあえず全部写真に撮っておきたいような気持ちになった。オール「いいね!」状態。ちなみにお酒を飲みながら歩いたりしているわけではないので、純粋な散歩ハイ。この心地よさよ。自分が町の中に溶けて広がっていく感じがする。

撮影・mokzo

撮影・mokzo

撮影・mokzo
「こっち行ってみますか」「ここで引き返しますか」と、休憩なしで2時間歩き続けると、日が暮れてきた。景色が全部青いフィルターを通したようになる、あの時間帯。そこら辺から漂う、知らない家の晩御飯のにおいよ。

撮影・鈴木

撮影・鈴木
「じゃあ今日はこれぐらいにして、軽く飲みに行きましょう」ということに。店選びを任されて少し悩んだが、JR平井駅近辺を歩いていたので、一度チミドロのMCミヤマッチに連れていってもらった「豊田屋」で乾杯することにした。

自分の行った居酒屋をmokzoさんに撮ってもらえるとは! 撮影・mokzo
このシーズンには無い「アンコウ鍋」が有名だが、安くて何を頼んでも美味しい大衆酒場として、地元の方々で賑わっていた。
いい一日の終わり
焼酎ハイボールを飲みながらmokzoさんが先日の大阪〜九州の旅で撮影してきたという写真を見せていただく。どれも自分の行ったことのない町の景色ばかりだが、やはりmokzoさんの切り取る風景には一貫してカラッとした悲しさや、気の遠くなるような長い時間の蓄積みたいなものが漂っていて、ため息が出る。これらの写真は随時mokzoさんのtumblrに上がっていくそうなのでぜひチェックしてみてください。
mokzoさんの写真を元にしてTシャツを作ってみたことは、この連載にも書かせていただいた通りなのだが、mokzoさんはそのことを大変喜んでくださっており、「Tシャツを注文してくれた方にぜひプレゼントしてください」と、なんと、mokzoさんの写真を絵ハガキ化したポストカードブックをいただいた。

自分用に欲しい一冊です
発色についてもmokzoさんの満足のいく仕上がりになったらしく、どこをとっても美しい写真ばかりの1冊。1ページずつ切り取れるようになっているので、「早く老人になりたいTシャツ」を購入してくださった方々に特典としておつけしております。
「今度はどこら辺を歩きましょうねー!」などとお話をさせていただきつつ、夜は更けていった。時間をかけて何度も思い返しそうな心地よい一日だった。
T散歩
チミドロライブ情報
2013年9月14日(土)
新しい花よ、即興
鶯谷ワッツアップ
開場時間 / 19:00
当日料金 / 1,500円(1ドリンク別)
出演 /
しっぽりーず
萩野和夫
藤井政英+南部輝久duo
チミドロ
夜の鷲・改
アヴァ労trio(三木勇・久モ・あたしよしこ)
2013年9月23日(月・祝日)
キンミヤナイト VOL.2
四谷OUTBREAK
開場時間 / 17:30
前売料金 / 1,500円(1ドリンク500円別)
出演 /
maniac mansion
Jackin'Box
GYPSY CANDLE
カラス79
麗華
BoardSole
チミドロ