まず、Tumblrの話です
「Tumblr(タンブラー)」というWEBサービスがある。画像や動画やテキストなどを投稿して共有できるツール。
アカウントを作ると自分専用のURLが割り当てられる。Twitterのように、「フォローする/される」という要素があり、自分がフォローした相手の投稿・共有したファイルが「ダッシュボード」と呼ばれる、Twitterでいうタイムラインのような場所にどんどん流れてくる。
その中からいいと思ったものを収集して、自分のTumblrページに並べていくというような。Twitterの例えばかりになるが、気に入ったツイートをお気に入りにしたりリツイートしていく楽しみに近いかもしれない。と同時に、もちろん自分の投稿がみんなに拡散される面白さもある。
で、私はそのTumblrが好きで、いつも利用している。多くの人をフォローすると、ダッシュボード上には「可愛いアイドル」、「国籍不明のアート」、「笑える画像」、「レトロな少女マンガの表紙」、「かっこいいスニーカー」、「エロ」などなどが大量に並ぶ。その混沌具合。その中から、気に入ったものを集めていく。
そうしていると頭の中が洗い流される感じがして、気持ちいいのである。豊島区・目白に「切手の博物館」という施設があって、その建物の中に古切手を売るスペースがあるのだが、そこに置かれた1枚10円の箱から自分の好みにあったものをハイスピードに選り分けていく、というのをたまにする。やっているとあるタイミングから不思議な高揚感が生じてきて、いつしか頭が空っぽに。ブレインウォッシュと言うのでしょうか。それも、Tumblrに近いなと常々思っている。
そしてmokzoさんの話
長々失礼しました。今回紹介させていただく「mokzoさん」は、そのTumblrがきっかけで出会った方なのだ。前述したように、絶えずカオス状態の自分の「ダッシュボード」の中で、ふと目を引く日本の風景写真がある。投稿者は「mokzo」という名のユーザーだ。
こちらがそのURLである。

例えばこんな(以下、掲載画像はすべてmokzoさんの撮影によるものです)
最初は、数ある良い画像の中の一つ、という感じだったのだが、頻繁に投稿されるそのmokzoさんの風景画像が、どれもすごくグッとくるので、この人はどんな方なんだろう…と次第に気になり始めた。

いいなあ
チミドロのMCハナイさんと、「mokzoさんっていう人の写真たまりませんねー!」などとやり取りしている内に気持ちが高まってきて、ある時、Tumblrにメール機能があることに気付き、酔った勢いでmokzoさんにメールしてみた。「いつもお写真見てます!すごく好きな雰囲気で」みたいな。「mokzoさんはプロのカメラマンなのでしょうか!もし写真集などを出されていたらぜひ見てみたいです!」というようなことも書いた。

ぼーっとしてくる
すると数日して丁寧なお返事をいただいた。私のメールにお礼を述べてくださるとともに、「私はプロではなく、趣味で写真を撮っている素人です。なので、Tumblrで写真を公開しているだけなんです」とのご回答を。「写真集、いつか作ってみたいですね」とも書いていただいたので、「その日を楽しみにしています!これからもチェックさせていただきます」といったメッセージを返した。

それから数日が経ったある日、思いもよらぬ展開が
数日後、mokzoさんからTumblrにメッセージが来ていたので読んでみると、「BCCK」というオンラインで電子書籍を作成できるサイトを使って、写真集を作ってくれたというのだ!
実際のものがこちらです。
「T散歩2」
(書籍の読み方)
@ パスワードを聞かれるので「tm2012m」と入力してください。
A 書籍の詳細情報が表示されますので確認の上「本を読む」をクリックしてください。
B 別ウィンドウで表紙が表示されますのであとは矢印キーで行ったり来たりして楽しんでください。
表紙から最終ページまでを数回行き来し、しばらく遠い気分になった。そしてひしひしと感動した。「美容室や床屋関連の写真をまとめました。」と記載されている通り、これまでのmokzoさんの撮影写真の中から美理容関連の看板や建物を集めたもの。みなさんどうですか?とても穏やかな気持ちになりませんでしょうか。
mokzoさんの写真の魅力はなんといっても、退屈だけど幸福な、枯れているけどジメジメしてなくてどこか風通しのいい雰囲気だと思っている。凪いだ気持ちになり、少し寂しい気持ちにもなる、日曜日の昼下がり〜夕方の散歩のような、というとそのままなのだが。大したことない日々をそれなりにいいなと感じて生きていけたらなという、自分の思いに近いものを勝手に感じる。

さらにまた
mokzoさんから「こういうテーマの写真集が見たいとか、ご希望があれば教えていただけますか?」というありがたいメッセージをいただき、それをもとに下記の2つの写真集を作っていただいた。
「T散歩 夜の昼下がり編」
「T散歩」
どちらも前述の「BCCK」で作られたもので、パスワードは同じく「tm2012m」。「夜の昼下がり編」は、キャバレーや風俗店など、いわゆる水商売系の店舗の看板や建物を集めたもので、もう一つの「T散歩」は「眠くなるような風景」という私のあいまいな要望にお答えいただいたものだ。両方とも最高。読後、町を実際に歩いた後のような心地よい気持ちになる。
図々しいお願いのついでに、mokzoさんにこのコラムのことをお話し、掲載の許可と(さらに)インタビューの許可までいただいた!次にその内容を紹介したい。
mokzoさんへのメールインタビュー
― mokzoさんがTumblrにアップされている写真が以前から大好きでした。お写真は昔から撮られているのですか?
mokzo「写真を始めたのは3年ほど前です。“T散歩”を始める以前に別のアカウントでTumblrをやっていて、VOW系の面白い画像を集めていました。他の方が撮った写真ばかりをポストしていたところ、自分でも面白い看板などを探して写真を撮ってみたくなったのが写真を始めたきっかけです」

― 実は私も『VOW』が大好きで、VOWの中学校の友人と自転車で町を駆け回ってネタを探していました!1作か2作掲載してもらってとてもうれしかった記憶がありま す!mokzoさんもVOWに投稿されたりしていましたか!?
mokzo「学生時代に宝島を読んでいて、VOWは大好きでした。でも、当時は自分で探して投稿するという発想すらなかったです」
― 写真を始められる前から町を歩いたり、変な看板を見つけたりするのはお好きだったのですか?
mokzo「写真を始める前は今とはまったく逆で、休日は家に引きこもってネットしたり、音楽を聴いたり、DVDを観たりと完全にインドアな生活でした」

― 以前、突然メールさせていただいた時に「プロのカメラマンではないんです」とおっしゃっていたと思います。というと、これらの写真はお休みの日に撮りに行くのでしょうか?
mokzo「そうですね。休日に撮りに行ってます。撮影した中からうまく撮れた写真を選んで、Tumblrにポストしています」

― 散歩はお好きですか?私は最近、休みの日に何にもない住宅街を歩いている時がたまらなく落ち着くのですが、mokzoさんの散歩の愉しみ方があったら教えてください!
mokzo「私も同じです。人通りの少ない住宅街や路地裏を歩いている時の精神的な開放感がたまらないですね。あとは、写真に撮りたくなる被写体を探しながら歩いているので、宝探し的な愉しみがあります」

― 私が見ていて「この風景はきっとあの町だ」と分かる場所も少しだけあるのですが、撮影場所はかなり広範囲に見えます。mokzoさんが撮影する場所を選ぶ際の基準ってあるのですか?
mokzo「行ったことの無い街を歩くのが好きなので、電車の路線図を見ながら下車する駅を選んだりする事が多いです。電車で移動中に気になる物を見つけた場合は、最寄り駅をチェックしておいて時間ができた時に撮影しに行ったりします。ネットで見かけた写真などで、自分でどうしても現地に行って撮影したい場合は、場所を調べて訪問したりします」

― 晴れている風景がほとんどで、そこがmokzoさんの写真の、少し寂しいけど心にしわーっと沁みてくるような幸福感の要因の一つかもと思います。雨の日の写真や夜の写真がほとんど無いのには理由がありますか?
mokzo「雨の日の外出が単純に億劫というのが理由ですね。あと傘を差しながらの撮影も面倒な事が多いので。夜景は難しいので、もっと腕を磨いてから挑戦してみたいと思います」

― 「単純に億劫」とは、すごくシンプルな理由だったのですね!晴れていれば季節に限らず 一年中街歩きをされていますか?
mokzo「写真を始めてからは、季節に限らず街歩きをしています。天気の良い休日に家にこもっているなんて、今では考えられないですね」
― mokzoさんの写真には武田花とか沼田元氣といった方々の写真や、赤瀬川原平の「超芸術トマソン」や「路上観察学」に通じるものを感じます。お好きな写真家や写真集があったらぜひ教えて欲しいです!
mokzo「写真集はあまり見ないのですが、木村聡さんの『赤線奇譚』はお気に入りです。『赤線奇譚』に掲載されている建物で現存している物に関しては、いくつか自分でも写真を撮りに行ったりもしました。私の作った写真集の『夜の昼下がり編』に載っている”居酒屋ラブ”の3枚の写真は『赤線奇譚』に掲載されている場所に行って撮影したものです。俯瞰の写真は木村さんの真似をして撮影しました。本に載っている建物で、すでに取り壊しになっている物も多く、こういう時にもっと早く写真を始めていればと後悔しました。」

mokzo「『トマソン』や『路上観察学』は今年になって初めて読みました。街歩きをもっと楽しめる参考書的な本を探していたとこ ろ、この2冊に行き当たりました。街とか物の見方の参考になりましたね。実際にトマソン物件もちょくちょく見かけるので、写真に撮ったりもするようになりましたし」
― 私はカメラに疎く、まるで分からないのですが、もしかしたら知りたい方がいるかも知れないと思ってお伺いします。使用機材はどんなものでしょうか?
mokzo「カメラは2台しか持っていなくて、メインで使用しているのがCanon PowerShot S100です。ズボンのポケットに入るちょうどよいサイズで、またRAWで撮れるので気に入ってます。RAWで撮影したものは、AdobeのLightroomというソフトを使って現像しています。旅行など遠出する時はNikon COOLPIX P7100を予備で持っていきますが、よほどの望遠が必要でない限り使用することはないですね」

― mokzoさんがご自分の写真の中で特に気に入っている写真ベスト3を紹介していただけますでしょうか!またよろしければその理由をお聞かせください!
mokzo「ベスト3を選ぶのは非常に難しいので、写真を始めたばかりの頃に撮影したお気に入りの1枚を紹介します」

mokzo「この写真は横浜の山手という駅周辺を散歩していた時に撮影しました。散歩を終えて山手の駅に向かっていたところ、こじんまりとしたコインランドリーがありました。ふと中をのぞいてみると、コインランドリーに不釣合いな馬の絵が飾ってあり、店内の薄暗さとあいまって不気味な雰囲気を醸し出していました。
中には誰もいなかったので店内に入りましたが、コインランドリーで写真を撮っていると通行人から怪しまれてしまうと思い、あわてて写真を撮りました。急ぎの撮影だったので、うまく撮れているか不安だったのですが、家に帰って確認したところ店内の雰囲気をうまく捉えられていました。そういう訳で、被写体を発見した時の驚き、撮影中のドキドキ感を今でも覚えている思い出深い1枚です」
以上がmokzoさんへのメールインタビューである。正体の分らぬ相手からの質問に丁寧にお答えいただき本当にありがとうございました!路上にある些細なものを見落とさず、その魅力にドキドキしながら写真を撮り続けるmokzoさんの姿がぼんやり浮かぶようで、自分も早く散歩に出かけたくなった。何もない場所へ。
もしできたら、近いうちに「mokzoさんと行く住宅街撮影ツアー」を企画してみたいと思っている!その際はこちらで告知させていただきます!
チミドロライブ情報
11月17日(土)
トライアングル・スコーピオンVol.3/ビッグファイトシリーズ
中野heavysick ZERO
開場時間 / 16:00
開演時間 / 16:30
前売料金 / 1,500円
当日料金 / 1,800円(ドリンク代別)
予約 / rianglescorpion2012@gmail.com
出演 /
膀胱チョップ(from京都)
チミドロ
はっとりあつし(YOYOYOYORUNO)
LovePandaConnection
"変身忍者"佐藤豪
SHEMONES
代官山パンク日和
トミヤマカズヤスマキ
O.A HanHanArt(ミヤタケ from dB-BOX, ラリー from the mornings)
フード / ジムシィカリー(カレー)
2012年11月23日(金・祝)
ゲットー酒場
池袋ミュージックオルグ
開場時間 / 18:00
開演時間 / 18:30
当日料金 / 1,500円(ドリンク代別)
Live /
鼓膜シュレッダー
SOCCERBOY
nakayoshi group
チミドロ
...and more
DJ / eboy
Food / フードブースあり…缶ベキュー検討中です
2012年11月27日(火)
第一回神楽坂唄絵展「大丈夫!〜I don’t care about it ! 〜」オープニングパーティー
代官山山羊に、聞く?
開場時間 / 19:30
開演時間 / 20:30
当日料金 / 3,000円
Live /
チミドロ
Tony Guppy
服部政行
UTAE♪ BAND
Live Painting /
神楽坂唄絵
2012.12.1(土)
LBT presents「Drinkers High! 11」
池袋Knot
開始時間 / 18:00
終了時間 / 23:00
当日料金 / 2,000円(ドリンク2杯付き)
フライヤー画像提示 / 1,500円(ドリンク1杯付き)
DJ & Live /
DJ allnight(Goto Tetsuya)
DJ UCHIAGE
Yamajet(ビア充 / nlbs)
ぐちょん(sabacan records / merry works)
ごきげんTV(ディスク百合おんとPPS)
チミドロ
鼓膜シュレッダー
DJイオ
パリッコ
Yuta Suzuki