前編では西成区の花園町あたりから散策を開始し、佐伯さんがずっと入れずにいた定食屋さんや雑貨店、喫茶店などをめぐった。
後編も引き続き、佐伯さんが前から気になっていた店に入ってみるところからスタートします。
ここでお知らせなのですが、私の文章をまとめた書籍、スズキナオ『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと
古文書のようなメニューのある店へ
さて、「白」という喫茶店を出て引き続き散策し、南海電鉄・西天下茶屋駅近くの商店街にやってきた。
佐伯さんは、商店街沿いにある「マル屋」という喫茶店が気になっていたんだとか。私も以前、この道を通ったことがあり、同じ店に目を奪われてた記憶がある。そして確かにその時、入る勇気が出なかった。
いわゆるレトロな雰囲気の喫茶店。
古ぼけた食品サンプル。
これだけなら全然いいんだが、この、店の外の看板がすごい。
なんか、ボロボロになった紙片が吊り下がっている。よく見ると、メニュー名と価格が書いてあるようだが・・・。佐伯さんは「店の雰囲気はいいんですけど、これがなんか怖いんですよ!」と言う。確かにそうなのだ。
しかし今日は三人で力を合わせ、意を決して入店だ。
とはいえ、入ってしまえばなんとも雰囲気のいい喫茶店である。
地元の方らしきお客さんがちらほら、静かに思い思いの時間を過ごしている様子。我々も少しゆっくりさせてもらおう。
メニュー表はこうだ。
佐伯 :なんすか!この古文書みたいなメニュー
スズキ:すごいですね。紙を大切にするお店なのかな。
佐伯 :うわ、やっすくないですか?コーヒー 160円
スズキ:ウイスキーコーヒーっていうのもありますね。ウイスキーが入ってるのかな。あ、でも線が引いて消してあるから今は無いのかもしれない
スズキ:じゃあ僕はコーヒーにします!
ラミー:フルーツジュースにしようかな。100円やし
佐伯 :コーヒーと、パフェ食べてみようかな。パフェ 200円って。めっちゃいい店やん!
スズキ:ね。勇気を出して入ってしまえばいい店だった。
佐伯 :この辺に仕事で通い出して 3年近くなるんですけど、最初は西成区やしちょっとビビってたんですよ。でも通ってみたら、人なつっこい、いい町なんですよ
ラミー:このお店はトイレも綺麗でいいですね。
佐伯 :はは。「末広」やばかったもんな。用を足してたら「ギィィィィ」って開いていくんですもん。歪んでるから。
スズキ:あのトイレ、なんか上の方に謎の神棚みたいなのがありましたよね。
佐伯 :そうそう
コーヒーが一杯 160円×2、フルーツジュース 100円、パフェ 200円で合計 620円。
佐伯さんが注文したパフェ
佐伯 :これが 200円か。
スズキ:いいっすね。
佐伯 :うん、普通においしい。
佐伯 :メニューの値段のとこに線引いて値段を下げていってるってヤバないですか。普通値上げでしょ
佐伯 :ここは普通にまた来たいなー。食べ物系もよさそうですよね
ラミー:マスターも可愛らしいですね
各自の飲み物を飲みながら歓談。
ラミーさんの記憶に鮮やかに残る「まずかった食べ物」の話。佐伯さんが大阪のミニコミショップ「シカク」で開催された古本市に大量のエロマンガを出品したが一冊も売れずに全部戻ってきた話など。
このピコカルを読んでいる方には説明不要だと思うが、佐伯誠之助さんは、AV、つまりアダルトビデオを元ネタに様々な珍フレーズをサンプリングし、それをダンスミュージックとして昇華させるという特殊なスタイルを貫くミュージシャンである。
で、AVから抜き出した面白いフレーズ、佐伯さん言うところの「淫語」が曲の中で重要な要素となるのだが、それを探すのがすごく大変だ、という話が面白かった。
ラミー:佐伯さんは、今も新しく AV からサンプリングしてるんですか?
佐伯 :一応、ちょいちょいストックはしてるんやけど。曲作りはしんどいけど、サンプリングもしないともう何も進まへんから。でもネタだけがたまっていくからやっぱり難しい。
スズキ:そうですかー
佐伯 :結局、ダンスミュージックに合うような、パンチラインになるセリフってある程度声の張りがないと使えなかったりするから。ささやくような面白い言葉だったら割と出会えたりするんですけど、ある程度大きめの声で、なおかつ、後ろに邪魔な音が何も無くて、とか絞ると、ほんまに数少ない。大量の汚泥から砂金を拾うような作業になるんで。まず AV の DVD から音声データだけ取り出して MP3 に変換するんですよ。で、スマホに入れて通勤中にずっと聴くっていう
スズキ:ははは。電車で何かあったら真っ先に捕まりますよね
佐伯 :いいフレーズがあったらスマホの波形を編集するアプリでそれを切って保存していくみたいな。そうやって、いいフレーズがたまっていくじゃないですか。そしたら自分が好きな曲とそのフレーズだけをランダムでシャッフルして聴いていくんですよ。そしたらこのビートにこの言葉めっちゃあうやんみたいなことがたまにある、それを曲作りに使ったりとか。繰り返し普段から聴いておかんと、頭の片隅に記憶しておかんと、いざというときにそのライブラリーから拾えないんですよ。
ラミー:わけわかんないこと、めっちゃがんばってますもんね
佐伯 :そこしかがんばるとこないですからね。
佐伯 :いやぁ、めっちゃ落ち着ける店やなー
スズキ:そろそろ移動しますか?次は千林大宮に
ラミー:そうですね。千林大宮はとにかく広いんですけど、「末広」みたいなところがないんですよね。それなりに整った店ばっかりで、
スズキ:「末広」っぽくなくていいんですよ!
ラミー:最近、町が結構変わってて、「チーズハットグ」とか売る店が増えてて
佐伯 :ハットグ
ラミー:韓国で流行ってる屋台なんですけど。そういう若い人向けの屋台が増えてて。いつも通るパン屋さんがあるんですけど、そこの店の前に椅子を出して、通る人を全員泥棒を見るような目で見てたおじいちゃんがいたんですけど(笑)そのおじいちゃんが最近いなくなって、いなくなると寂しいですね
ラミーさんの因縁の地・千林大宮へ
「マル屋」を出た一行。大阪メトロの天下茶屋駅から地下鉄を乗り継いで千林大宮駅へと向かった。
千林大宮は大阪でも有数の規模を誇る商店街で有名な、活気あふれる町。ラミーさんは職場がこの辺りにあり、10年近く通っている町なのだが、職場が近いゆえにあまり近寄りたくない町でもあったらしい。
確かに「チーズハットグ」を売ってるお店がいくつもあった。
「職場の人に会いそうなのも嫌なんですよね」とラミーさん。
500円で入場できるライブハウスがあったので、「ここで知らない人の歌を聴くのもいいかも」と話す。
ここは一見入りづらそうな店だけど、すごく美味しくて評判なんだという。
その名も「屑(くず)」という立ち飲み店もあるが、ここはここでよさそうな店だし、そう考えると入りづらい店ってなかなか貴重なのかも。
千林大宮、そこら中に良さそうな居酒屋がある。散歩しているだけで楽しい。ラミーさんに案内をしてもらいながら歩いているうちに日が暮れ、ちょうどいい時間帯となったところで、ラミーさんが今回勇気を出して入ってみたかったというお店にたどり着いた。
この「金太郎」である。ビシッと気合の入ってそうな居酒屋であり、外から中の様子が見えない。「いらっしゃーい!」感のある看板などが外に出ていないので、「ちょっと高級な店なのかな?」とも思う。
いい店だった金太郎
入ってみましょう。
で、入ってみると、なんと!普通にいい店である。そりゃそうか。
生ビールがゴクゴクと旨い。
おでんもこんな感じで、とても綺麗。
スズキ:おおーおでん!すごい美味しいっす
佐伯 :綺麗な味や。安心して体に入れられますよね。
スズキ:ははは、体に入れるって。
ラミー:でも本当に、人の作ったものを体に入れるわけですもんね。食べ物って。そう考えるとすごい。それ面白い
佐伯 :でもバックパック背負って旅する人は一食ごと勇気出して食べてるのかもしれないですね。
スズキ:知らない国の知らない料理を食べるんですもんね
佐伯 :そうや、この前、職場で指を尖ったので突いてもうて、血が出て、その時、なおさんを思い出したんですよ
スズキ:ははは。ありがとうございます
ラミー:え、なんでですか?
スズキ:僕が前に、ピクニックをした時に、つまみの袋を開けようとして調子に乗って指を切っちゃって、14針ぐらい縫って。それが、まだピクニックが始まったばっかりだったんですよ。これからってところで血がダラダラになって「絶対に戻ってくるからみんな待ってて!」って、友達が付き添ってくれて病院に行ったんですけど、戻ってきたら結構みんな帰っちゃってて。悲しかったな。
ラミー:あー、でもそういう場面が似合うから、いいですよね
スズキ:そうですか!
ラミー:いや、失礼な意味じゃなくて、そういうのが笑える話になるっていうのがいいです。私は成功するタイプでもないのに、失敗した時に味もでないし、スべる。
スズキ:失敗が似合わないタイプなんですね
ラミー:指摘したらかわいそうみたいな感じになって、「見なかったことにしよう」ってなるっていう。前にフルマラソンに無理矢理応募されて走ることになったんですけど。
佐伯 :ええ!絶対無理やん
ラミー:走り始めた瞬間に無理だなってわかったんですけど、なんとか8キロ走った時点で、これがもし 10キロマラソンだったら残り 2キロ、それだったらなんとか行けると思ったんですけど、フルだからまだ 34キロあるし。絶対無理!って心が折れかけたんですけど、なんかみんな私が走れそうって思ってるらしくて、スベりたくない一心で走り切りました。
スズキ:ははは。それで、でも走れるっていうのがすごいけどな
(しばし和やかに飲む)
ラミー:今日、こうやって色々行けてよかったです
佐伯 :ですね。すごいすっきりした
ラミー:そういうためにあるんですね、この会は
佐伯 :僕も基本、一人で飲みに行くタイプじゃないんで。まあ、人と行くとしても「末広」に飲みに行かないじゃないですか(笑)ほんまに、仕事であの辺行くようになってから3年、ため込んでたモヤモヤを一気に解消できてよかったっす
スズキ:でもまだまだそういうお店はあるんじゃないですか?
ラミー:佐伯さんが言ってた「酒房ミキ」も気になるし、あと、見せてくれた「のん気」も、気になります
佐伯さんが以前、勇気を出して一人で入って貴重な体験をしたという「酒房ミキ」
こちらも佐伯さんが気になっていた店。通りかかったらシャッターがおりていてこんな貼り紙があったそうだ。回復を祈りたい
スズキ:もうそれぞれの行きづらい店は行ききったから、今日の目標は達成というか。
ラミー:今日、もう終わりですか?
スズキ:どうしましょう。もう少し歩きながら、一人だと普段行かないようなお店を探してみましょうか
佐伯 :そうしましょうよ
さらに散策を続ける
「金太郎」を出て、もう一軒飲みに行こうと散歩を続けることにした。
ほろ酔い状態ゆえか、この辺りの写真が残っていないが、少し歩いて「しめの里」という、まさに締めにちょうどいいような店名の立ち飲み屋にたどり着いたようだ。
※これを書いている今、取材から半年経っていて記憶があいまいな部分があります
店主 :今日は何かの情報でここにたどり着いたんですか?
佐伯 :いえ、今日はたまたま、こちらの可愛い女性が見えたんで(とお店で飲んでいたご婦人を指さす)
ご婦人:ははは。上手やわ
ラミー:わたしの仕事場が近くで
店主 :ああ、そうですか。ようけある中でようこんな店を選んでくれましたねー!地元の人でも知らん人多いですからね
佐伯 :ハムカツすごい分厚いですね。
店主 :さっきのお客さんがチーズを、よかったらどうぞと
ご婦人:よかったら食べて、それじゃまたー
佐伯 :いただきます!お気をつけてー!
スズキ:この店はどれぐらい営業されているんですか?
店主 :もうすぐ 4年目ですね
ラミー:千林で仕入れてるんですか?
店主 :それももちろんあるんですけど、私が鶴見の方から来てるんで、そっちで仕入れてるのもありますね。でもここも商店街が安いんで結構使いますね。
スズキ:活気がありますもんね
店主 :物価が安いんですわこの辺は。今日もなんや「松崎しげるのぶらり歩き」ゆうて、ロケ来てましたわ。この辺は大阪らしいゆうか、大阪のおばちゃんに会えますからね。よくロケしてはります。
佐伯 :(隣の席で飲んでいる、後に「ミヨさん」というお名前であることが判明するご婦人に)この辺りでいつも飲んでるんですか?
ミヨ :そうやね
ラミー:他によく行かれるお店ってありますか?
ミヨ :よう知ってるとこがあるよ。歌いに行くお店、沖縄の人がやってる
ラミー:そこって今もやってますか?
ミヨ :やってるよ、私の顔見たら知ってるから入れてくれはるわ。あそこは一番安全や
スズキ:そこで最後に一杯飲ませてもらうのもいいかもしれないですね
ラミー:後で連れていってもらってもいいですか?
ミヨ :ええよー
と、そんな話になり、急きょミヨさんの案内で町を歩くこととなった。
今日の終着点「ちゅらみか」にたどりつく
ミヨさんの行きつけだという「ちゅらみか」というお店へ。
店名から伝わってくる通り、沖縄出身のミカさんという方がママを務めるスナックで、沖縄料理もとても美味しいらしい。
ここから、IC レコーダーに録音されていた音声をかき起こす形で雰囲気を伝えていきたいと思う。ここまでもそうだけど、ここから先はさらにもう、何か生活に役立つような情報みたいなものは少しもない。ただただ、スナックの空気が少しでも伝われば満足だ。
(ご常連さんが高橋真梨子「はがゆい唇」を歌う声)
ミヨ :今日は久しぶりに飲んでるわぁ。
佐伯 :よく来るんですか?
ミヨ :いやぁ、来られへん時が多いねん。
ラミー:混んでて?
ミヨ :うん
ラミー:私、ここの目の前は通ったことあったんですけど、こういうお店だったんですね
ママ :あら、今日は、どんなつながりのみなさんなんですか?
佐伯 :バンドメンバーです
ママ :バンド!?
スズキ:ははは
ママ :ミヨちゃんバンド始めたん?じゃあ、バンドの歌声を聞かせてもらわんと
スズキ:頼みますよ!佐伯さん、リーダー!
佐伯 :いやいやいや
佐伯 :でもあれですね、沖縄の方って歌うまい人多くないですか?うちの奥さんも沖縄系なんですけど歌うまくて。沖縄の人ってみんな一芸持ってるというか、
ママ :ああ、そういうところあるかもしれんね
佐伯 :あと結婚式でみんな延々酒飲みながらずーっと歌うのがすごい
ママ :じゃあ、今日もそうやって潰れてもらって
佐伯 :はは
(ご常連さんが中森明菜「SAND BEIGE(砂漠へ)」を歌う声)
ミヨ :遠慮なく歌ってください
ラミー:佐伯さんのマジ歌聞きたいです。
佐伯 :いや、マジ歌かー
スズキ:行きましょうもう!お願いします
佐伯 :どうしよっかなー
(佐伯さんが、やしきたかじん「なめとんか」を歌う声)
スズキ:めちゃくちゃいい声だな
ミヨ :うふふ
お客 :うまい!
スズキ:いいですねぇー。いやー
ミヨ :声が綺麗やな。イエイ!
佐伯 :ミヨさんも歌ってくださいよ
ミヨ :わたしはええねん
佐伯 :せっかくやからナオさんとデュエットとか
スズキ:ははは。せっかくってなんですか
(ミヨさんが、中島みゆき「糸」を歌う声)
ミヨ :声が出えへんなー。2番だれか歌ってー!
スズキ:いや、全然いい声です!このまま歌ってください
お客 :ミヨどうしたん、今日はやけに若い歌うたって!
(私が、サザンオールスターズ「いとしのエリー」を歌う声)
佐伯 :いいねえ!
ミヨ :イエイ!イエイ!
スズキ:恥ずかしい
ミヨ :ええ歌やなー
佐伯 :ラミーちゃんは?
ラミー:わたしは無理です。20何年ぐらい歌ってないんで
(ご常連さんが中森明菜「ひらり -SAKURA-」を歌う声)
佐伯 :知らない人の歌を聞くのもいいですね
スズキ:それが最高なんですよ。歌詞もじっくり読んで聴ける
佐伯 :誰の歌?
スズキ:中森明菜なのかな
(ご常連さんが THE BOOM「島唄」を歌う声)
ラミー:わたしは歌わなくていいんですよ
ミヨ :いや!絶対ききたい
スズキ:こうなったら聴きたいですね
ラミー:わたし歌う気ないのに!なんで歌うことになったんだろう
スズキ:でも、もし本当に嫌だったやめましょう
ラミー:もう入れてしまいました
(ラミーさんが「巨獣特捜ジャスピオン」のテーマ曲「おれが正義だ!ジャスピオン」を歌う声)
スズキ:ははは。完全に少しもわかんない!
佐伯 :なんなん?ジャスピオンって
ラミー:(間奏の間に)子どもの頃に買ってもらったカセットしか持ってないから実際に見たことはないんですよ!
スズキ:じゃあ今いる誰も知らないんですね。
お客 :ジャスピオーン!
(ママが夏川りみ「童神〜天の子守唄〜」を歌う声)
佐伯 :うわ・・・歌声がマジで最高っす!
スズキ:この今歌ってる CD が欲しいですね
佐伯 :ママの歌も最高やし、めっちゃいいこの曲、やばい
スズキ:泣きかねない
佐伯 :いやー素晴らしい!めっちゃいい!
スズキ:泣くなよー!ヘイヨーヘイヨー
酔ってどんどん歌いまくる!
ミヨ :「エロチカセブン」歌って!あれ好きやねん
佐伯 :ナオさん、ほら
スズキ:わかんないっす。歌えるかな。
ミヨ :好きやねーん。お願い!
(私が、サザンオールスターズ「エロティカ・セブン」を歌う声)
ミヨ :イエイ!
佐伯 :知らないって、結局フルコーラス歌ってるじゃないですか
スズキ:歌い出すとめちゃくちゃ楽しい
(佐伯さんが、長渕剛「とんぼ」を歌う声)
ママ :モノマネちょっと似てるー
ミヨ :とんぼは、いいなー!
佐伯 :歌ってみたらやばいな。いいなー!この曲マジで!
ミヨ :かんぱーい!
佐伯 :今日はいいお店にありがとうございました
(佐伯さんが、チャゲ&飛鳥「ひとり咲き」を歌う声)
ミヨ :この歌知ってるわ
スズキ:このたっぷりした歌い方最高ですね
ミヨ :イエイ!
スズキ:うまいっすね
ミヨ :声が出てるわやっぱり
(私が、長渕剛「しゃぼん玉」を歌う声)
ミヨ :とんぼにシャボン玉、ええなあ!何年ぶりやろ!イエイ!オイ!イエーイ!
スズキ:ははは
佐伯 :超名曲!カバーした方がいいんじゃないですか!長渕いいなあ!グイグイ来るなー!歌詞がグイグイ来る
(ミヨさんが、ASKA「はじまりはいつも雨」を歌う声)
佐伯 :メロディが超いい。名曲やなこれ!やばい!
スズキ:最高です。ASKA は結局最高
ラミー:私が知ってる歌で盛り上がる歌ないですかね、何か
スズキ:ありますよ!なんだろう。「年代」から探してみましょう
(ご常連さんが BEGIN「三線の花」を歌う声)
スズキ:めちゃくちゃお上手な方ですね
佐伯 :いいねえいいねえ!
スズキ:うま!こんないい歌ないよ
ミヨ :ここのママもね、最初はそんなにうまくなかったんよ。この店やってるうちにどんどん上手になったんよ。ほんまやで。貫禄ついてきたんよ
スズキ:そうなんですか
ミヨ :最初の頃、あんまり上手じゃなかった、あの頃が懐かしい。あの頃がよかった
スズキ:ははは。ママの初期が好きなんですね。
ミヨ :アーイーヤーイヤーサーサー!
(ラミーさんがTHE YELLOW MONKEY「追憶のマーメイド」を歌う声)
スズキ:最高です。全然歌えるじゃないですか!
ミヨ :イエーイ!
ラミー:高校の頃にカラオケ行ってた頃の曲です
(佐伯さんが岡村靖幸「SUPER GIRL」を歌う声)
ミヨ :イエーイ!
ラミー:かっこいいですね
スズキ:うま!歌いこなしてる。岡村ちゃんが乗り移ってる。佐伯さんのカラオケ7アワーズみたいなイベントあってほしい。
ラミー:職場の最寄り駅でみんなが歌ってる絵が変過ぎて面白い。10年この町で働いてきて、こうやって飲んだことがなかったから。10年やってきて、今日はじめてこの町をちょっと知った気がします。
ミヨ :今日、すごく楽しかったよー
ラミー:大嫌いな職場でもすぐ近くにいい場所があるんですね。町が悪いんじゃないんですね
佐伯 :おお、なんかいいですね
ラミー:職場があるから駅に近づくだけで気持ちが落ち込んでたんですけど、そこで飲んで楽しいっていうのがすごい、いいなって。そう思えてるのが嬉しいです。
この後、もうみんなが「そろそろ帰りますかー」と言っているのに私がまだ歌っている声が録音されていて、その後、「4月あたりみんなで沖縄行きましょう!」と盛り上がっている声が聞こえる。
その4月はとっくに過ぎてしまったけど、録音を聴いていて、あの楽しかった時間のことが鮮やかによみがえってきた。
店を出てミヨさんと別れ、三人ともだいぶ酔って駅に向かう。
写真を見ると、私以外の二人とも、ビニール傘をどこかに置き忘れている。「三本の矢!」って誓い合ったのに、いつの間にか、ただの折れやすい一本の矢だ。
ちなみにこの日、2軒目に入った「フリーダム」で買った「いぬ」は、いつも仕事をしている机の横に飾っていて、これを書いている今もこっちを見ている。
なんだか面白い一日だった。
お知らせ
何度もすみません。私は現在、フリーライターをしていて WEB を中心に文章を書いているのですが、そうやってここ数年の間に色々なところに書かせてもらった私の文章をまとめた書籍、スズキナオ『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと
自分としては、まさかこんな風にまとめられることになるとは思ってもみなかった文章ばかりで、それゆえにかなり大幅に手直ししました。
全体を通して、読んでどんな風に思ってもらえるかわかりませんが、こんな本があってもいい、と手に取っていただけたら幸いです!
それが 11月1日に発売されるのですが、11月17日には、酒場ライターのパリッコさんと一緒にやっている連載コラム「のんだ?のんだ!」を書籍化した「“よむ"お酒
本の出版にかこつけたイベントもいくつかあります。よろしくお願いいたします!
2019年11月19日(火)
「パリッコのトークライブ「っていうか飲み会」3杯目〜『“よむ"お酒』発売記念SP〜 」
新宿 ネイキッドロフト
前売料金 / 1,800円
当日料金 / 2,000円(要 1オーダー 500円以上)
出演 /
パリッコ(酒場ライター)
今野亜美
スズキナオ(チミドロ)
2019年12月9日(月)
平民金子×スズキナオ W出版記念トーク!
大阪・西九条 シカク
開演時間 / 19:00
当日料金 / 1,500円
出演 /
平民金子
スズキナオ(チミドロ)