私は歴史にめちゃくちゃ疎いけど、それでもそういうものを見ると「へぇー、この場所で、龍馬がねー」とか、なんかそれなりに思うものがある。ここに居たんだなーみたいな、時間が交錯する不思議な感じ。
しかし、自分しか知らない“マイ史跡”みたいなものなら実は誰にでもあるんじゃないだろうか?「この公園のこの辺りで転んで足をくじいたよなー」とか、「この路地で不良に絡まれたんだよなー」みたいな。思い出の地。
それらは間違いなく公的な史跡としては残らずに消えていくのだろうけども、自分にとっては確かに史跡みたいなものである。そして、それはそれでそういうものとして巡ってみたら楽しいかもしれない。
ハナイさんのマイ史跡をめぐる
私はチミドロというバンドをやっているのだが、今回はそのバンドメンバーである“ハナイさん”に協力してもらい、ハナイさんの地元のマイ史跡を一緒にめぐることにした。
夏の暑い日。ハナイさんの地元である西武池袋線の大泉学園駅にやってきた。
大泉学園の周辺には昔からアニメのプロダクションが数多く存在し、アニメ関連会社もたくさんあるし、松本零士をはじめとした作家たちも住んでいたりするそうで、「日本アニメ発祥の地」として町を PR している。駅構内にも「銀河鉄道999」の車掌さんの像があったり。

しかしそういった町の歴史とは関係なく今日はハナイさんの史跡をめぐっていく。駅で合流。

最近まで痛風で歩行困難状態だったというので少し心配だったが、とりあえず酒さえ控えれば大丈夫な状態らしい。早速スタート!

ハナイさんが大泉学園に住み始めたのは中学1年生から。親戚が近くに住んでいた縁もあって、千葉県の柏の方から引っ越してきたのだという。その頃は駅前にも畑が広がっていて、今では信じられないぐらい町の様相は変わったそうである。

駅の北口方面に大きな通りを歩き、交差点を左折してしばらく歩くと 1つ目のマイ史跡である「ラーメンさとし」があった。
「ハナイさんのマイ史跡 その1 気づいたら移転してたさとし」

史跡についてコメントを求めたところ、ハナイさんは中学〜大学時代にかけてかなりの頻度でこの「ラーメンさとし」に通っていたのだが、ある時行ってみたら店が無くなっていた。「ああ、潰れちゃったんだな」と思ってそれから 10年以上が経過。最近ふと「さとし」のことを思い出し、ネットで検索したら、さとしは「潰れたんじゃなくて少し離れた場所に移転してた」ということが分かった。それで久々に行ってみたら店のオヤジがそのまま年を取った状態でそこにいて深い感慨を得たそうです。
少年時代から「さとし」ではいつも「ショウガ焼き定食」ばかり食べていたというハナイさん。今となっては「ショウガ焼きと、あと、瓶ビール」とオーダーしている自分を大人になったなと感じるのだとか。
画像を見ていただくと分かる通り、この日は店が休みで残念だったのだが、ハナイさんが若い頃よく食べていたショウガ焼きの味を知ることができるという上でも貴重な史跡と言える。
さて次の史跡へ、と、案内を促したところ「バスに乗っていいかな?」と言うハナイさん。ハナイさんの実家の最寄り駅は確かに大泉学園駅なのだが、駅前からバスに 15分ぐらい乗っていった「大泉学園町」が正確な地元エリアなのだという。史跡が点在しているのもそのエリアとのこと。歩いていくのはかなりしんどい距離だそうなのでおとなしくバスに乗ることにする。

バスに乗りながら大泉学園という町について教わる。町を設計する時点から大学を誘致し、学園都市として発展させようとしていた大泉学園だったが、肝心の大学の誘致には失敗し、町名だけが残っているのだとか。「大泉学園」っていうけど、そういう名前の学校があるわけじゃないし、特に学園都市にもなっていない、ということだ。
途中でハナイさんが「あ、あれがパリッコさんの行ってた学校」と窓の外を指さす。

バスで 15分かかるハナイさんの家からすると、駅に近いパリッコさんはかなり都会っ子だという。
途中通過したバス停に「住宅前」という名前があったのだが、道の両側、ほとんどずっと住宅である。

少し手前で降りて、スーパー「マルエツ」の中に入っているドムドムハンバーガーで昼食。

今や都内にはここを含め 3店舗しかないというドムドムハンバーガー。「ここは史跡じゃないんですか?」と聞いてみると「ここは怖い感じの人たちがたまってたからほとんど利用してなかった」とのこと。

史跡への認定はならず残念ですが、子供から老人までやたらのんびり食事していた居心地の良いドムドムだったので立ち寄りスポットしてはおすすめです。
本格的な史跡めぐりがいよいよ始まる
一息ついて再び歩きだした我々。駅前から伸びるバス通りの両側にはちらほらとお店も立ち並んでいるが、ようやく現れた 2つ目のマイ史跡は意外にもなんにも無い場所。
「ハナイさんのマイ史跡 その2 宮沢りえがいたコンビニがあった場所」

聞くところによるとこの場所に昔セブンイレブンがあり、当時人気絶頂だった宮沢りえが表紙を飾る雑誌をハナイさんが立ち読みしていたところ、ふと横を見たら本人がいたのだという。「オレンジの服着てたんだー!忘れられない」と言う。どうやら実際このあたりに本人が住んでいたらしい。
今やそのコンビニも跡形もなく、ハナイさんが勝手に記憶にとどめているだけの史跡となっている。
大泉学園駅前は何度か歩いたことがあった私だが、「大泉学園町」近くには初めて来た。整然とした区画に割と大きめの住宅ばかりが立ち並ぶ町で、閑静すぎて炎天下に歩くと頭がボーッとしてくる。

しばらく歩くとそこがようやく 3つ目の史跡だ。
「ハナイさんのマイ史跡 その3 大泉公園と大庭くんの家」

ハナイさんはこの公園で水風船のぶつけ合いなどをして遊んでいたそう。あと、近所に住んでるヨシカズというおじさんに追いかけられたこともあった。取材時の猛烈な暑さもあり、「知らねーわ!」と思ったが、マイ史跡というのはそういうものなので仕方ない。

公園のすぐそばにはハナイさんのクラスメイトである大庭くんの家があり、よく遊びに来ていたとか。大庭くんのあだ名は「バオー」だという。会ったことはないが、元気だろうか。
バス通りに戻るとさらなる史跡が登場。
「ハナイさんのマイ史跡 その4 潰れちゃったサンロイヤル」

ハナイさんはラップグループ「練マザファッカー」の「D.O」と同じ中学校に通っていたそうなのだが、その「D.O」も常連客であったという洋食屋さんが「サンロイヤル」だ。2017年3月に惜しまれつつ閉店してしまい、今はテナント募集中。いかにも町の洋食店という雰囲気で、盛りも大きく、ハナイさんも馴染みにしていたという。食べてみたかったなー。
バス通りをさらに進み、次の史跡を紹介してもらう。
「ハナイさんのマイ史跡 その5 頭刈ってもらってた KITAZAWA」

中学〜高校にかけて散髪しに来ていた店らしい。ふーん、と思うけど、これがもしハナイさんじゃなくて坂本龍馬だったら「坂本龍馬 散髪の地」という碑が立つ可能性だってあるんだから坂本龍馬ってすげーな。
「ハナイさんのマイ史跡 その6 何回か家族で食べにきた蕎麦屋・大村庵」

これもまた史跡としての価値はあまり高くないけど、でも、美味しそうなお蕎麦屋さんでした。
さて、いよいよハナイさんの実家にかなり近づいてきたらしい。つまり、よりパーソナルな史跡が増えてくるわけだ。期待が高まる。
ハナイさんが歩道橋を指さし「あの歩道橋の上でさ、夜、行くところもなくて、タバコ吸ってよくぼーっとしてたりしたよ」と言う。実際にその頃の感じで佇んでもらった。
「ハナイさんのマイ史跡 その7 夜、ぼーっとしてた歩道橋」

これはファンにはたまらない史跡と言えそうだ。やり場のない思春期特有のあの感じを抱え、この歩道橋に登っていたのかと思うと心がざわめく。

歩道橋を降りてさらに歩いたところにはこんな史跡も。
「ハナイさんのマイ史跡 その8 夜、なんか来てた広場」

写真の右手には日販という書籍の取次業者の倉庫があるのだが、夜になるとその建物への通用門が閉まり、この場所は目的のないただのスペースになるという。そこに佇んだり、スケボーの練習をしたりしていたそうである。史跡の中身が徐々に抽象的になってきたな。
「ハナイさんのマイ史跡 その9 通ってた中学校」

“母校”という、最も史跡っぽい、中身の濃いスポットなのだが、「グランド広いな」ぐらいの感想しか浮かばなかったのは俺の想像力不足のせいであろう。
「なんかもう少し色っぽい史跡ないんすか!」とせっついて案内してもらったのがこちら。
「ハナイさんのマイ史跡 その10 好きな子に電話したことがある電話ボックス」

これはなんか、良い。「ここで彼女と初めて手をつないで」とか、そういうのってマイ史跡になりやすい気がする。色々詳しく聞きたかったが、ここで誰にどんな電話をしたのかについては決して教えてくれないハナイさんであった。
早いもので次が最後の史跡となる。ジャーン。
「ハナイさんのマイ史跡 その11 昔は駄菓子屋さんだった家」

赤いひさしにかすかに昔店だったらしき面影が残る貴重な史跡。というか、閉まってたり潰れてたりする史跡ばっかりだな!史跡ってそんなもんか。
この駄菓子屋前で友達とよくたむろっていたというハナイさん。中でも近所の鳶の息子のシンヤくんとは馬が合い、お互いヒップホップが好きだったことから後に「オペロン」というラップグループを結成するに至る。歴史マニアなら押さえておくべき流れであろう。
この後、ハナイさんとご両親のご厚意により実家に上がらせていただき、冷えたビールをいただきつつ昔のアルバムを見せてもらうという思いがけない展開に。
アルバムの表紙が素敵すぎる。

生まれたて期。

から一気に高校時代。

スチャダラパーの BOSE と撮ってもらったという写真。

今は無き「サンロイヤル」の貴重なマッチも出てきた。

ご両親に伺った大泉学園周辺の町の移り変わりの話なんかもすごく面白かったのだが、それについてはまたの機会にゆずりたい。
今回、マイ史跡を巡り歩いてみたところ、予想以上に面白かった。ここには書ききれないような、どうでもよく、かつ楽しい話がたんまり聞けた。想像して見て欲しい。歴史上の人物が「ここで僕があの有名なセリフを言ったんだよね」とか、目の前で解説しながら歩いてくれるツアーがあったらめちゃくちゃ貴重じゃないだろうか。
ハナイさんは万人とっては偉大な人物じゃないかもしれないけど、友達なわけだから、俺にとっては歴史上の人物のごとく貴重な存在である。そんな人が生きて目の前で史跡を案内してくれるのだ。なんで今までやらなかったんだろう。

みなさんもぜひ暇な時にでも身近な人と“マイ史跡”を案内しあってみて欲しい。歴史上の人物になってからじゃ遅いぜ!
チミドロライブ情報
2017年7月29日(土)
THE DAY will come
小岩 BUSH BASH
会場時間 / 16:00
前売料金 / 1,500円(+1ドリンク分)
当日料金 / 2,000円(+1ドリンク分)
LIVE /
赤い疑惑
花園distance
滝沢朋恵
POSTER
ClaSSIC4 duo
DJ /
ハナイ(チミドロ)
花澤王(ENERGISH GOLF)
リッチゴリラ(Y$F)
SWEETY DJ POSSE
2017年7月30日(日)
Block Party afternoon
下北沢 Three
開催時間 / 13:00〜21:30
入場料金 / 完全無料
LIVE /
でぶコーネリアス EX
チミドロ
MAMGA SHOCK
ひさつねあゆみ
Urban Drive Family
EVERYDAY PEOPLES
DJ /
マイケル J フォクス
四畳半
花澤王
2017年8月19日(土)
ゲットー酒場&酎酎列車「ゲッ酎」
幡ヶ谷 Forest Limit
開演時間 / 15:00
入場料金 / 2,000円(お酒のお土産付)
LIVE /
テクノウルフ
nakayoshi group
チミドロ
DJ /
AIWABEATZ
S-LEE
yudayajazz
cherryboy
パリッコ
けしー